棺の外の騒々しい声で目を覚ます。
どれくらい寝ていたのだろうと思い、同時に
なぜ棺の中で寝ているんだ、縁起でもないと、体を起こそうとしても指ひとつ動かない
そこでいよいよ疑問を持つが、自分は死んだのだと気づいたのは棺が開いた時だった。
周りには大勢の人がおり、そのほとんどが見覚えのある顔だったし、何より喪服であった。
死んだことに気づいてから少し考えるに、体が死んでも脳はしばらく生きながらえ、私自身は脳の残った領域の残滓であると結論付いたのだった。
そこからはただ自分の葬式を眺めるだけで、気づけば火葬される日となった。
ただの残滓である私は少しづつ考えもできなくなっていたので、燃やされなかったとしても結末は変わらないだろうと棺が運ばれる揺れをただ感じていた
炉にくべられる前に、皆の顔を見て、これだけの人々に見送られるのなら幸せだったろうと思っていたが、よく見ると見覚えのある顔は全て自分で、本当は棺すらもないのかもしれなかった。
残滓の分際で幸せを夢見る事は許されないと分かって、少し残念になりながらついに意識は塵となった。